●心の中の森を行く●

生きた証を残したい。私が言葉を忘れる前に

伴侶にも適材適所ってのがある

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私と結婚する前に、夫は歯科医の娘さんと見合いをしたそうだ。もう25年も前のことだ。当時の歯医者さんは、ほぼもれなく結構お金持ちだった。

 

その人とは2度会ったそうだ。その後すぐに向こうから断ってきたらしい。間に入った人の話によると、夫宅の様子を外から見てきたという。

 

夫の実家は非常に古い木造住平屋建て。綺麗好きな義母と、あの時代の男性には珍しく家事が全部できる義父との二人暮らし。確かに家は古くて小さい。しかし中はしっかりと手入れが行き届いていて、居心地のいい場所だった。

ただ確かに、贅沢ができるお宅には見えんかったな(笑)

 

事情はともあれ、どこの歯医者のおじょーさんかは知らんけど、よくぞ断ってくれた、と私はひっそりと感謝している。

 

本を買う以外にお金を使うことがない夫は、金銭的に堅実。そして、男の沽券だのプライドだのといった面倒で幼稚なものとは無縁な人だ。ひとり暮らしが長かったので、家事は一通りできる。自分のことは自分でやるっていう考え方がずっと残っている。

 

結婚後に私は脳血管奇形を発見され、少し自由にならない生活を送っているけれど、できないことはお願いしなくてもすーっと全部片付けてくれる。恩を着せることなく。そして

「調子がよくないときは睡眠が足りない。脳は休ませないといけない。はやく寝て」

と睡眠を促す。夫が私に強い口調で話すのは、私が寝不足になることをしようとしてる時だけだ。

 

ほんとうに見合いを断わってくれてありがとう。イヤミで書くわけじゃない。

 

私は金持ちの生活に疎い。歯科医の娘さんがどんだけ贅沢ができるのか全く想像できない。給食費まで免除される暮らしをしていた私には、お金は普通に生活ができる分だけあればそれで事足りる。

 

あれから四半世紀経ってるけど、夫は身体に気をつけている成果が出ているのか、年齢マイナス20で通用する外見のまま年齢を重ねてきた。

私より一回り年上で、もう老齢年金をもらう年齢になったけれど、やりたくて仕方ない仕事に追われてとても楽しそうに過ごしている。どうやら、業界的にその仕事は、日本では実質うちの夫しかやってない仕事みたいだ。

 

仕事場は自宅。パソコンがあればどこででもできる。固定費いらない。在庫いらない。人を雇わなくてもひとりでできる。身体と頭が動くうちは、仕事をやりたくて仕方がないと言っている。

 

まあ、価値観は人それぞれだ。伴侶にも適材適所ってのがある。お金に余裕がある暮らしに慣れている人には、夫のような人間と暮らすのは辛かろう。逆に、本だらけの部屋でパソコン打って黙々と仕事をするのが好きで、半額シールが貼られてた寿司だのバナナだのを買ってきて喜んでいる、そんな夫がありがたい私みたいなのもいる。

 

よくぞ残しておいてくれた。

 

他人さんからみてどうこうじゃない。自分なりのものさしで夫を測り、自分が納得できるなら、それはいい結婚をしたってことだ。

 

ありがたい人生だ。