●心の中の森を行く●

生きた証を残したい。私が言葉を忘れる前に

沖縄県勢のアルプススタンドで踊りたい一心でオカンは甲子園に行った

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沖縄県民は高校野球をアツくアツく応援する。本当にアツい。(準)決勝まで残った時は、車社会の沖縄から車が消えた。みんなテレビの前で応援してるからだ。仕事や外出どころじゃないってことだ。

元々沖縄が独立国だったせいだろうか。

それとも、地理的に本土と非常に距離があるせいだろうか。

とにかく「沖縄」「琉球」「島」とつくモノが大好きで別格。その反面、まだ本土への劣等感や反骨心を心に抱いている人もいる。

色んな意味で「わったーうまりじま(自分が生まれた島)」を殊更に大事にする県民性だと、行くたびに強く思う。

それが顕著に現れるのが高校野球だ。

 

今年は美爆音という異名をとる吹奏楽部を有する習志野高校と、沖縄尚学高校があたる好カード。組み合わせ抽選会を見た瞬間に、障害者手帳を手にして条件反射的にJRの緑の窓口に急いだ。新幹線の切符を買うためだ。

夫に報告したのは、切符と宿を押さえた後。我が家ではいつものことだ。

「明日、甲子園行ってくるわ」

「気をつけて行ってらっしゃ~い(にっこり」

 

多分、私がまだ動けるうちに、やりたいことは存分にやらせてやろうということなんだろうな。というか、引きとめても止まらんヤツだと身にしみているんだろう。済まんねえ・・

 

よっしゃ (^-^) これで踊れる。ハイサイおじさんで踊れる。沖縄県民じらーして(沖縄県民を装って)、アルプススタンドで踊れるぞ、アイヤイヤサッサー♪と叫びながら踊れるぞw

 

いい歳して何バカなことを・・wと笑う人もいるだろう。

勝手に笑ってなさい。

半世紀生きてきた病人が、誰にも迷惑を掛けず自分が稼いだカネで何やってようと、世間がとやかく言うことじゃねーの。

人を蔑む人生よりも、人を応援する人生の方がずっとずっと楽しいのに。人生がもったいないよそれ。

 

せっかくなので第一試合からずっとアルプススタンドに座って試合を見てた。沖縄は第三試合だというのに。いい席を確保したい、それだけのために、炎天下の甲子園でカチワリの氷で体を冷やしながら試合を見てた。

みんなじーっと試合を見てる。感情をあらわにするのは試合が動いた時だけ。「おおーっ」と軽く声が聞こえる。普通はそうだよな。

 

そんな試合を2つ見た後、第三試合でやっと沖縄の応援団とファンがわああっ!とアルプススタンドになだれ込んできた。アルプスからあふれて外野までいっぱいだ。本土で働いている沖縄出身の人がたくさん集まったんだろうな。

そしてだ。

試合はまだ始まってもいないってのに、なんか勝手にアルプススタンドがカーニバル状態になりはじめた。

三線(さんしん)を天に突き上げて歌ってるオッサン、ゴーヤーをカバンから出すおねーさん。自撮りしながら指笛吹いてるヘンなメガネとクバ笠かぶってるにーさん。酒のんだんだろな、いかに夫婦仲が悪いかを切々と訴えつつ陽気に踊ってるヤツまでいる。ここは居酒屋じゃねえよ甲子園だよ分かってるか?w

試合が始まる前からアルプススタンドはお祭り騒ぎだ。

このテンションは本土にはない。きっとない。見たことない。

 

ハイサイおじさん」や「オジー自慢のオリオンビール」が流れる中、酒場の酔っ払いみたいなノリと一体感の中で、「アイヤ、アイヤ、アイヤイヤサッサー♪」と吹奏楽の演奏に合いの手を入れて叫ぶ。みんなが叫ぶ。私も叫ぶ。

全然恥ずかしくないどころか、じっと静かに椅子に座ってたら「大丈夫ですか?熱中症ですか?」と心配されるくらいだ。

高校野球は熱狂するのが当たり前。踊る。叫ぶ。笑う。

遠いところから来てるのに。というか、遠いところからやってきたからこそはじけるのかもしれないね。そして、ふるさとから遠く離れて本土で働いてたりするからかもしれないね。

 

応援の甲斐なく沖縄負けちゃったんだけどね。それでも沖縄は素晴らしかった。

朝から見た2試合と違って、習志野高校の校歌が鳴り終わった瞬間、沖縄のアルプススタンドは習志野に大きな拍手を送ったんだよ。

朝の2試合では、負けが決まった瞬間に無表情で帰り仕度を始めてる人が多かったってのに。

沖縄のアルプススタンドは最後まで素晴らしかった。あんなに盛り上がって応援した自分たちが負けたというのに。それでも勝者におめでとうと言える。なかなかないんじゃないかな。

私は習志野高校がある県に住んでいるのだけれど、あえて沖縄側アルプスで観戦して本当によかった。

 

そして、甲子園の砂を袋に詰めている球児の姿を遠目に見ながら思ったよ。

「砂を沖縄に持って帰れる時代でよかったな」と。

 

甲子園に沖縄の代表が初めてやってきた時、沖縄はまだ日本に返還されていなかった。要するに、沖縄はまだアメリカに占領されたままの外国だったんだ。戦争のせいだよ。

だから首里高校の選手が船で沖縄に戻った時、検疫に引っ掛かるという理由で、せっかくの甲子園の土を海に捨てられてしまった歴史がある。無念すぎる。パスポートを持って国境を越え、せっかく甲子園までたどり着いたのに。

その後、石は検疫に掛からないということで、首里高校に石が届けられたと聞いた。 

歴史的・政治的に難しい問題がまだまだあるけれど、同じ日本人として戦い、応援し、見送ることができたことを私は本当によかったなと思っている。

 

帰りの新幹線で気がついた。日焼け止めを塗り忘れた足の甲が、火傷したみたいに真っ赤になっているw

「馬鹿なことをして・・その歳じゃ日焼けは元に戻らないわよ」

と呆れられるかもしれない。でもいいの。元気なうちにやりたいことを思いっきりやってるんだから、足の甲が日焼けしてても何の問題もないの。

足は動けばいいの。

歩ければいいの。

それで幸せなの。

 

半世紀の間 病気と共に生きてきた私に、あと人生の時間はどれくらい残ってるだろう。それが分からんからこそ

アホなことは徹底的にやる。

遠慮せずに目一杯やる。

中途半端が一番カッコ悪い。

 

熱狂的に生きる。熱狂的に応援する。

それの何がアカンのや? (^-^)